「年金相談の現場で頼りになるツールに」著者インタビュー 長沼明さん

2019.09.02インタビュー

長沼 明 さん

市長、市議会議員、県議会議員、そして社会保険労務士の経歴を生かし、これまで共済組合を中心に公的年金に関する執筆や講演を行ってきた長沼明さん(浦和大学総合福祉学部客員教授)。近刊の著書『共済組合の支給する年金がよくわかる本』(9月弊社刊行予定)は、被用者年金一元化以後に共済組合から支給される年金について、事例を中心に詳しく解説した本です。刊行を前に、長沼さんに本書の特徴をうかがいます。

増加が見込まれる共済組合の年金相談

――執筆の経緯を教えてください。

本書は、年金関連のウェブサイトや専門誌など複数の媒体に連載された年金講座を中心にまとめたものです。連載当時は、掲載メディアの性質上、「年金制度の動向に関心を持つ読者に最新のニュースをいち早く届ける」という時事的な観点でテーマを選択していましたが、書籍にまとめるにあたって、共済組合が支給する年金に絞って編集・加筆し、1冊の本としての性格を明確にしました。

2015年10月に被用者年金が一元化されて、これ以降、共済組合が決定・支給する年金については、近所の年金事務所でも手続きや相談できるようになりました。また、金融機関などでも、一元化前後の共済組合の期間を含む相談が増えてくることが予想されます。年金相談の現場では、今後さらに共済組合に関する知識が求められるようになってくると考えています。

一般に市販されている書籍で、共済組合の支給する年金についてこれほど詳しく記述したものはありません。年金相談の現場で活動する社会保険労務士の先生方、そして、地方自治体で共済組合関連の実務に携わる方などにも活用していただきたいと思っています。

現場で使える本

――本書の編集方針を教えてください。

本書は、年金相談などの実務に携わる方を対象に、この1冊があればすべての給付に対応できるよう編集しました。

「老齢厚生年金・退職共済年金」「障がい年金」「遺族年金」など、給付ごとの章立てにして、それぞれについてさまざまなケースを扱っています。また、共済組合の支給する年金には旧法と新法があり、新法でも被用者年金一元化前と一元化後の期間があってとても複雑ですが、本書ではすべての期間について触れるようにしました。

――事例を通して解説しているのはなぜでしょう。

連載中は、主な読者として、年金相談を行う社会保険労務士の先生方を想定していました。年金相談のお客様は、これから年金を受給することになる一般の方々です。そこで、ちょうど相談を受けるときのように、一般の方が疑問に思うところを事例として設定するのがよいと考えました。

本書は、年金相談の模様を再現しているといってもいいかもしれません。筆者の考える望ましい年金相談とは、ただ単に必要な情報をやりとりするだけでなく、まずは相談者の人生に寄り添ってその話に耳を傾けることから始まるものだと思っています。そうでなければ、相談者が満足できる相談になりません。文中、条文の解釈には必要のない話も混じっているのはそのような理由からです。どうぞご容赦ください。