「年金相談の現場で頼りになるツールに」著者インタビュー 長沼明さん
2019.09.02インタビュー
相談者と一緒に本を開きながら
――図版を多用していることが特徴的です。どのような使い方を想定していますか。
たとえば、共済組合の加入期間がある人の場合、相談するほうも受けるほうも、同じ「共済年金」という言葉を使いながら、別のものを指していることがよくあります。双方が図を見ながら、「私の言う『共済年金』とはこの部分です」とか、「ここの部分と基礎年金とを分けて繰り下げることはできるんですか」というふうに、質問を受けたりそれに答えたりすると、スムーズに話が進められるのではないでしょうか。
障がい年金ならば「初診日が加入期間のどこにあれば、職域部分である障がい共済年金が受給できるのか」とか、遺族年金であれば「夫が亡くなったときに受けられる『4分の3』とはどの部分を指すのか」といったことも詳細なイメージ図で表しているので、金融機関など年金相談の現場でこそ活用しやすいものになっていると思っています。また、市役所の人事課や教育委員会の福利を担当するところでも、1冊置いておくと、職員から問い合わせが来たときに重宝すると思います。わざわざ、共済組合に聞かなくても、回答できるようになります。
また、今回、特に実用性を考えて掲載したのは、証書や通知書、届出の様式です。実物をできるだけリアルに再現したものを掲載しました。ご本人にしか送られないもので、共済組合などのウェブサイト等で見本が公開されていないものも多く、相談を受けたときに初めて実物を目にする、ということもあるかもしれません。実際とほぼ同じものを事前に見ておけば、お客様が実物を持って見えたときも、「初めて見る共済組合の書類」という驚きの表情を見せずに、すぐに適切な対応することができるだろうと思います。
本書はオールカラーで、図版から色の情報も得ることができます。たとえば、お客様に直接、イメージ図を見ていただいたりして、「こんな書類は届いていませんでしたか?」と記憶を思い起こしていただく、そんな使い方も可能です。
――巻末の資料も豊富です。
巻末には早見表などを多数掲載しました。お客様の年金の支給開始年齢が何歳からなのかはもちろんのこと、その場で年金額の検算が必要になったときなど、給付乗率等の数字がすぐに確認できたりします。また、本文のイメージ図でも、繰下げ受給の相談に見えた人にイメージ図を示しながら、「どこの部分の年金の繰下げができるのか」「別々に繰下げることは可能なのか」もわかりやすく説明ができるように、工夫されています。
たとえば、職域加算の本来水準や従前額保障の給付乗率などは、一般の年金書ではあまり目にすることがないものですが、本書では大きい字で2頁を使って掲載しています。また、消防吏員や警察官の階級表も掲載しており、たとえば、「警部で退職したが、共済組合では『特定警察職員』に該当するのか。年金は早くもらえるのか?」といった疑問にも、巻末資料を開ければ即座に答えることができます。